『うんこ』に殺される?

このページを監修している山口醫院院長山口貴也医師からのメッセージ「人の健康を左右する多くは、『腸内環境』」をご覧ください。


『殺人ウンコ』という本には、自分は行ったことが元で、ウンコに殺されるとあります。

 

腸内細菌は、1,000種以上、100兆個~1,000兆個と言われています。人の細胞が60~100兆と言われているので、同数~その10倍の細菌が腸内にいることになります。

 

腸内細菌は、人が食べたモノを栄養素にして生きています。食べ物を消化するのは人間だと思っているでしょうが、腸内細菌も消化を助けてくれています。漢方薬の中には、腸内細菌が消化をしないと効果がないモノもあります。

 

ビタミンを作ってくれたり、短鎖脂肪酸という腸の粘膜細胞の栄養源になる物質も作ってくれています。そのほか、神経の伝達物質を作ったり、ホルモン様物質を作ったりもします。

 

このように、腸内細菌は人間にとって良い事をしているかのように見えますが、人間のためにしているのではなく、細菌が自分のために行っていることが、結果的に人間にも良い結果になっているのです。

 

『殺人ウンコ』には、一部の腸内細菌が食べたモノを腐敗させ、臭化水素や硫酸塩、アミンと呼ばれるアミノ酸が作り出されることが書かれています。

 

このアミンには、血管収縮作用や攣縮作用(血管が異常に収縮すること)、また炎症を起こす作用があります。

 

心筋梗塞や脳梗塞が起きる時は、この腸内の腐敗が起きている時です。したがって、『人間の大半は糞死している』ことになるのです。身体の中の腐敗物にまみれて殺される・・・嫌な話です。

 

『腸内環境』の悪化は、心筋梗塞や脳梗塞だけにとどまらず、直接接する大腸の癌や、その他の癌の原因となるほか、メタボリックシンドローム、脂肪肝、糖尿病、認知症など、多くの慢性疾患とも関わっています。

 

さて、みなさんの腸内環境はどうでしょうか?

便秘、下痢、胸やけ、食後の膨満感、抗生剤を何度も飲んだ、胃酸を押さえる薬を飲んだ、鎮静剤をよく飲むなど、これらのどれかに当てはまると、腸内環境が荒れている可能性があります。

 

それだけではなく、関節炎、鼻炎、アレルギー、ダルさ、頭がスッキリしない、じんましんなどの皮膚異常など、腸とは直接関係のない症状も、腸内環境の悪化が原因で起きている可能性があります。心当たりはありませんか?消化器は大切なのです。

 

クスリや農薬などが腸内環境に与える影響もお知らせいたします。

 

私も無知な頃には抗生剤を飲んだことがあります。肉・養殖か天然かわからない魚・農薬漬けの野菜・精製された炭水化物をたくさん食べ、酒を浴び、タバコもたくさん吸っていました。

ストレスが重なり、扁桃腺炎を繰り返し、年に何度か抗生剤を飲み、今考えれば阿呆なことをしていました。

なぜ免疫が落ちてしまうのか?に気付かず、免疫を落とすことばかりをしていました。薬嫌いの私も、急性扁桃炎で高熱が出た時には、薬を飲んでいました。

 

痛いと言えば鎮痛剤、胃が痛み胸焼けすると言えば胃腸薬、ウィルス性の風邪をひいたと言えば抗生剤(ウィルス性の風邪には抗生剤は効かないのに・・・)などは、一般的によく処方されている薬です。日本が世界に誇る国民皆保険とは、こんなものです。

 

腸内環境が悪くなってくると、腸内で出来る物質があり、それが尿に混じっているかどうか?を調べることと、問診で患者さんの腸内環境の良しあしを判断しています。

 

では、腸内環境を良くするにはどうしたら良いのでしょうか?

 

私が田舎に住む理由の一つは、地元の無農薬栽培された野菜などを食べられるからです。商品の表示方法では、『自然栽培』『有機栽培』『低農薬栽培』『栽培期間中無農薬』などがあるようですが、一番良いのは、自分の信頼している人が作った野菜であることだと感じ、

そこから野菜を分けていただいています。

 

農薬が悪い理由のひとつは、腸内の細菌を殺してしまうことです。ところが、多くの皆さんは、少なからずも農薬が付いた野菜、抗生剤などが混ざった餌を食べた家畜、保存料が使われた加工食品、防カビ剤や抗菌剤が使われた輸入食品を食べざる負えません。

 

中でも、小麦や乳製品を多く食べると、腸に炎症を起こし、粘膜を壊し、タイトジャクションも壊されたりします。(上皮細胞が密着できなくなることから細胞に隙間が出来てしまい、たんぱく質などの異物混入がたやすく出来てしまうような状態)

 

このような状態を作ってしまうことが、『殺人ウンコ』の正体です。

 

こんな環境に負けないためには、口から腸内細菌の種類を増やすための食物を入れるしかありません。細菌の多様性を保つことが大切です。食物繊維を分解する細菌を多くし、腸粘膜に炎症が無く、粘液が十分に作れ、タイトジャクション(上皮細胞の密着度が高く、体内の水分蒸発や体外の異物混入を防ぐ)が強固であること、腸の免疫が正しく働くことが重要です。

 

腸内に良い細菌を増やすには、保存料が入っていない手作りの発酵食品を食べる事です。代表的なのは、味噌、豆ぞ、ぬか漬け、塩漬け、朝鮮付け、生酒、納豆、酒麹、豆腐よう(沖縄の郷土料理)、どぶろく、すぐき(京都の郷土料理)、なれ鮨、麹、くさや、このわたなどがありますが、現在山口醫院では、100種類の菌が配合された食品を使っています。発酵食品を多種摂取するのがなかなか難しい方に、手軽で便利に発酵食品を食べていただきたいとの想いからです。良い菌をとりながら、このような食品利用も1つの方法です。
 
さらに腸内環境を良くするには?も、お伝えしていきます。

 

皆さんは、水溶性の食物繊維を召し上がっていますか?水溶性の食物繊維は、腸内細菌の大好物なのです。

海藻・オクラ・レンコン・モロヘイヤのようなネバネバ食品には、水溶性の食物繊維が豊富に含まれています。

また、食事のバランスとして、肉・魚・穀物を食べるよりも、多量の野菜を食べることが大切です。不溶性の野菜も、お通じを良くするのに大切なモノです。

 

オリゴ糖も、腸内細菌の好物なので善玉菌を増やしてくれます。大豆などの豆類・たまねぎ・ ねぎ・ごぼう・にんにく・アスパラガス・ブロッコリー・カリフラワー・アボカド・バナナなどに含まれている栄養素です。

 

また、先にもお伝えしたタイトジャクション(上皮細胞の密着度が高く、体内の水分蒸発や体外の異物混入を防ぐ)を強くする食べ物には、短鎖脂肪酸(お酢に含まれる酢酸や発酵した乳に含まれる乳酸など)や、ケルセチン(玉ねぎや蕎麦など)があります。

 

さらに、腸の粘膜を修復するには、アミノ酸も必要です。グルタミンやグルタミン酸はアミノ酸の一種で、タイトジャクション(上皮細胞の密着度が高く、体内の水分蒸発や体外の異物混入を防ぐ)を強くするほか、腸の粘膜層を増やす働きもあり、腸粘膜細胞の栄養素にもなります。その上グルタミンは、免疫の働きに必要な栄養素なので、免疫の働きを上げることも出来ます。コロナ禍の現在、大切な栄養素ですが、科学的に合成されたものではなく、天然の昆布には多く含まれている栄養素なので、昆布の出汁だけではなく、昆布そのモノも食べる必要があります。昆布には、水溶性食物繊維も多く含まれているので、一石二鳥です。

 

野菜や海藻をたくさん食べ、食物繊維やグルタミンを摂り、蕎麦や玉ねぎでケルセチンを摂り、発酵食品で腸内細菌を増やしていきましょう。

 

私はこれにプラスし、土壌菌から作られたプロバイオテクス(人体に良い影響を与え、私達の体内に生息している微生物とよく似ている微生物『善玉菌』を含むモノ。)を摂ることで、腸内環境を良くしています。

 

小麦や乳製品、精製された穀物、肉や魚ばかり食べていると、『殺人ウンコ』が出来てしまいます。ご自分のカラダをいじめてしまう『殺人ウンコ』を作らず、腸を大切にすることで、ご自分のカラダを守りましょう。